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映画製作した時が即ち映画監督”『ベルリンファイル』リュ・スンワン監督来日特別講義

『ベルリンファイル』
『ベルリンファイル』
© 2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
7月13日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
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こんにちは 上野まり子です。
韓国スパイアクション映画屈指の名作『シュリ』から14年、陰謀の舞台を半島から世界へ移し、さらなる進化を遂げたハイブリッドスパイアクション『ベルリンファイル』が7月13日(土)いよいよ日本公開となる。 出演は韓国を代表する演技派俳優ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、リュ・スンボム、そして紅一点チョン・ジヒョン。監督は韓国の鬼才リュ・スンワン。緻密に仕立てられたプロットと強烈で緊迫したアクション、破滅的なロマンスで韓国を初め、北米21都市で公開され、”映画史上最高の完成度“と高い評価を受けている。
ベルリンの高級ホテルでの武器取引の緊迫したオープニングシーン。新型ミサイルの輸出を目論む北朝鮮と、ハイテクを駆使してその動きをマークする韓国。韓国映画特有のリアリティ溢れるアクションと緻密なスパイ戦、現実の世界情勢を加味したストーリーに、韓国を代表する俳優陣、全ての要素が絶妙なアンサンブルを奏で、観る者を一気に引き込む。
すでに公開されている日本オリジナル予告編では、ハ・ジョンウ演じる北朝鮮秘密諜報員とハン・ソッキュ演じる韓国国家情報員の緊迫感あふれる対峙に壮絶な戦いの序章を感じさせる。さらには見えざる陰謀に翻弄されるハ・ジョンウとその妻チョン・ジヒョンなど、複雑に絡み合う人間関係と裏切りという人間ドラマの展開をも予想させる。

リュ・スンワン監督

多くの著名人、文化人を始め、その分野の専門家である軍事評論家からも高い評価が寄せられる中、ハリウッド進出の呼び声も高いリュ・スンワン監督が来日、6月17日に映画美学校(東京・渋谷)にて特別講義が開催された。
この日の司会進行は篠崎誠監督、共に会場入りしたリュ・スンワン監督は“コンニチワ”と日本語で挨拶、お互いにとって良い時間になればと特別講義はスタートした。

映画好きの父の影響で幼い頃より映画館に足を運んだというリュ監督は呪物映画、ホラー映画好きで、特に香港映画のヒーローには憧れていた。 中学時代から映画製作に興味があり、高校ですでに友人と8ミリ映画を撮り始めた。全てを身につけようと映画を観たり、文献をあさったりした時代、お陰で受験には失敗。そのままフィルムワークショップに通うことになる。時代は政治運動的影響が残る80年代からビデオカメラでの撮影が可能となった90年代へ。リュ監督にとって仕事をしてはお金をつくり、週2度、3ヶ月通ったワークショップ、今では想像もつかないほどの劣悪な環境の中、映画製作を学ぶ日々。だがそこで様々な人脈が出来た。パク・チャヌク監督もその中の一人だ。また人生の伴侶もこのワークショップで出会うことになる。

デビューまでに書き上げたシナリオは11本、どれも実を結ばなかった。才能がないと諦めようと思った事もあったが、最後にどうしても一本撮っておこうと、短編4本で1本の長編になるように制作をスタート。その1作目短編が映画祭で最優秀作品賞を受賞、その賞金とスポンサーを募って2作目、3作目と制作し、4作目まで撮り終え1本の長編映画『ダイ・バッド 死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか』が完成した。撮影にはパク・チャヌク監督の余ったフィルムと無断で持ち出したカメラがあてられた。そのようにでもしなければ映画製作などままならなかったとエピソードを紹介した。 映画の世界への道案内だったというパク・チャヌク監督の映画批評を読んで、観る目を養ったというリュ監督、大巨匠の中でも影響を受けた鈴木清順監督もパク監督が勧めてくれた。ソウルでのインタビューが忘れられないという。鈴木清順作品『東京流れ者』は自身のコメディー映画の手本となった。

さて折角の特別講義、映画を学ぶ学生からの質問を受けることに。
『ベルリンファイル』での北朝鮮の反応は?の質問には海外の人が感じる程の抵抗はなかったが、事実を湾曲せずに描く事を心がけた。またベルリンを舞台にしたことについては、冷戦時代のイデオロギーの象徴的な国であり、70年時代には留学生をスパイと捏造した東ドイツ事件も起きている。またシン・サンオク監督とその妻で女優のチェ・ウニさんが北朝鮮に拉致され、映画を作っていたが、ベルリン映画祭への参加で脱出できたという背景がある。ベルリンには西側で最大級の北朝鮮大使館が置かれていることも舞台とした理由だ。
劇中の“顔が似ている”と言うセリフは、自身も経験した外国人の顔の見分けがつき難いエピソードを反映した。 映画を学ぶ学生ならではの脚本、プロットに掛けた時間は?の質問には“ア〜!”と大きなため息の後、作ったプロセスを思い出したくない程大変な作業だった。シノプシスに1年、最初は北朝鮮衛兵が売られて行くところから書き始めたという。だが、調べて行くうちに第3国で北朝鮮の人物と出会う人物をスパイと想定して、期限を決めてストーリーを展開して行った。 正当性を検証し、骨格が出来た上でシーンを考えるというスタイル。多くの修正を加え、長い時間をかけて出来上がった。

篠崎監督の<アクションの背景が面白い>との意見に、リュ監督は人物と背景は密接に関係があり、人物像を固めた上で空間をデザインする。ロケハンはアクション監督、美術監督も同行して行い、シナリオに反映する。 屋上から落ちるシーンはラトビアの事務所から想像した。ソウルは次々に高層ビルが建築され、地上では息苦しさを感じる。その点屋上は視野が開け、人間の欲望を表現するのに最適だ。但しスタッフが機材を上げなければならず嫌がると笑顔を見せる。 海外ロケが多かった本作、その為に撮影順も撮影許可が優先した。その他ベルリン、ラトビア、ソウルのセットでも撮影した。
監督作品のトレードマークは?には、無意識を意識するのは難しいと言いつつ、シナリオが要求することに忠実に従い、<私のスタイル>が作品を支配しないように心がけている。新しい作品を新しいスタイルで制作していくことを心情としていると答えた。 本作は信念に閉じ込もっている人々を描いた作品のために構図としても縦横をくっきりと描いたことになるかもしれない。題材やストーリーによって、また新たな作品を作る。

最近韓国では映画監督になる事自体を目標にしている人が多いが、映画を作る事は職業ではなく、資格も必要としない。映画製作に正解はない。映画を製作した時が即ち映画監督だ。困難を乗り越えてよい作品を作ってほしい“心配するな!”と学生へメッセージした。

『ベルリンファイル』リュ・スンワン監督特別講義@映画美学校
特別講義を受講した映画美学校の学生などに囲まれて記念撮影。

『ベルリンファイル』
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7月13日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
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【概要】
2013年韓国
監督・脚本:リュ・スンワン(『生き残るための3つの取引』)
武術監督:チョン・ドゥホン(『G.I.ジョー バック2リベンジ』)
出演
ハ・ジョンウ(『チェイサー』)、ハン・ソッキュ(『シュリ』)
チョン・ジヒョン(『猟奇的な彼女』)、リュ・スンボム(『クライング・フィスト』)
配給:CJ Entertainment Japan

【story】
アラブ組織との武器取引現場を韓国情報院の敏腕エージェント・ジンスに察知され、からくもその場から脱出した北朝鮮諜報員ジョンソン。なぜ、このトップシークレットが南に漏れたのか?
まもなく、北の保安監視員ミョンスから、妻ジョンヒに二重スパイ疑惑がかけられていると知ったジョンソンは、祖国への忠誠心と私情の板挟みになり苦悩を深めていく。しかしジョンソンは、まだ気づいていなかった。すでに彼自身までが恐るべき巨大な陰謀に囚われていたことに。
CIA、イスラエル、中東そしてドイツの思惑も交錯し世界を巻き込んだ戦いが“陰謀都市ベルリン”で始まる。 生き残るのは果たして・・・。

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