「平成24年度文化庁映画賞贈呈式」、『隣る人』に「文化記録映画大賞」
こんにちは 上野まり子です。
文化庁が日本映画の振興の一環として、あらゆる人が映画を通じて集う場としてと「東京国際映画祭」と同時に開催している「文化庁映画週間」。開幕日20日には優れた文化記録映画作品および永年にわたり日本映画を支えてこられた方々を懸賞する「平成24年度文化庁映画賞贈呈式」が行なわれた。
文化庁長官近藤誠一氏は主催者として挨拶に立ち、映画には大きな力がある。メディアに注目されるエンタテインメント性の高い作品だけではなく、記録映画や短編映画なども製作されている。また様々な専門分野の人々の努力によって作品が出来上がり、多くの人を感動させる。
日本の文化、科学技術の発展に寄与し、社会的、歴史的意味のある作品を「文化庁記録映画 文化記録映画賞」で、日本映画の品質の高上に永年寄与してきた人々を「映画功労部門」で顕彰することによって、今後も日本映画の発展に一層寄与していただきたいとした。「文化記録映画部門」受賞作品および監督の受賞挨拶、「映画功労部門」受賞者の功績とコメントを簡単にご紹介する。
「文化庁記録映画 文化記録映画大賞」
■『隣る人』
製作:アジアプレス・インターナショナル 刀川和也監督:公開できるだろうか、観てもらえるだろうかと思いつつ製作した。多くの人々の力と協力で完成し、たくさんの人々に観て頂いている。またこの映画を評価していただき嬉しい。映画の舞台となった児童養護施設の子供たちや家族、職員や関係者に感謝する。彼らが一生懸命生きていることをこの映画で伝えることにより、多くの方の心を揺さぶることが出来たと思っている。施設の子供たちや職員の皆様にこの賞を贈りたい。
「文化庁記録映画 文化記録映画優秀賞」
■『医(いや)す者として 〜映像と証言で綴る農村医療の戦後史〜』
製作:(株)グループ現代
鈴木正義監督:共に働いたグループ現代の仲間たちに感謝する。病院関係者、地域住民の皆様にこの賞をささげたい。
「文化庁記録映画 文化記録映画優秀賞」
■ 『沈黙の春を生きて』
製作:坂田雅子(株)シグロ
坂田雅子監督:ベトナム戦争に従軍し、枯葉剤によって夫をなくしたことが製作のきっかけだ。ベトナムでは今も苦しみが続いている。またまだ伝えなければならないことがあると思った。「沈黙の春」のレイチェル・カーソンの50年前の警告が、3.11が起こったことで今重い言葉となっている。これから50年先、100年先を見据え命の大切さを考えて行きたい。
「映画功労賞」
●赤松 陽講造 映画タイトルデザイン
個々の作品内容を的確に把握し、その世界を効果的に表現してみせる独自の文字デザインは、多くの監督から信頼を得ている。
受賞挨拶:受賞は後継者の育成にもなる。
●明田川 進 音響監督
音響監督とは科白と音楽を除いた音のパートに責任を持つ仕事で、アニメーションにおける「音の存在感」を示した。
受賞挨拶:作品のイメージを伝えてもらって、音で表現する。音の世界を認めてもらって嬉しい。この仕事をする者の喜びとなる。
●井関 惺 映画製作
国際映画プロデューサーとして海外との共同制作や日本映画のグローバル化にパイオニアとして貢献した。
受賞挨拶:リスクの高い世界といわれているが、これからも良い映画を作っていく。
●佐々木 英世 音響効果
映画120本、ドラマ400本と国内の音響効果制作集団の中心的存在で、後進の育成にも尽力している。
受賞挨拶:音響効果の大切さを確認していただき、今後も後進の育成に尽力する。
●芝山 努 アニメーション監督
映画版「ドラエもん」22作品他、多くのテレビアニメの監督を務め、その壮大なスケールと卓越したアイディアで子供から大人まで魅了した。
受賞挨拶:アニメの24コマの世界を続けて生きたいが、時代がそうもいかない。良いスタッフに恵まれており、これからも続けていく。
●林 隆 映画美術監督
日活スタジオで製作される膨大な作品の「美術」に関して適切なアドバイスを与え、撮影所の美術技法を伝えるなど、広く映画美術の継承、後進の育成に貢献した。 受賞挨拶:現場の職人から多くを学んだ。後継者問題は日本映画の存亡にかかわる。文化庁の支援によって塾を開設し、これからの日本映画の美術を担う人材を育成していく。
最後にコ・フェスタ2012実行委員会副委員長迫本純一氏が映画人として学ぶことが多く、毎年この式典に出席することが楽しみだ。文化記録映画受賞作品はどれも映画製作に関わる苦労と信念が伝わってくる。映画に関わるものとして刺激され、元気を頂く。また映画はスターが注目されるが、プロデューサーや多くのスタッフによる総合芸術だ。「映画功労賞」を受賞した皆様の一言によって、その方の仕事や人生、想いが伝わる。この「文化庁映画週間」ではパネルディスカッションやセミナーなど違った角度から映画を取り上げている。自国の文化を主張すると同時に相手の文化を認めるという多様性に文化の本質がある。映画はチームワークによる総合芸術だ。その意味においても「文化庁映画週間」は意義深い。改めて受賞作品、受賞された皆様にお祝いを申し上げる。これからもこの式典が永く続きますようにと挨拶した。
近藤文化庁長官(中央)、コ・フェスタ実行副委員長(グリーン蝶タイ)と受賞者の皆様「平成24年度 文化庁映画賞受賞記念上映会」
10月27日(土)
上映館:シネマート六本木
■『医(いや)す者として 〜映像と証言で綴る農村医療の戦後史〜』(優秀賞受賞作品)
上映:11:00〜
■ 『沈黙の春を生きて』(優秀賞受賞作品)
上映:14:10〜
■『隣る人』(大賞受賞作品)
上映:17:00〜
各回上映後に舞台挨拶が行なわれる。
詳しくは「文化庁映画週間」HPにて【今日の一言】 人気俳優の出演やスター監督の作品が華やかに取り上げられる中、ドキュメンタリー、記録映画の商業的な成功は難しいのが現実だ。 あまり取り上げられる事がない記録映画の分野を顕彰することは、この分野で活躍する人々、またこれから進もうと思っている若手の励みになる。 合わせて映画製作に係わる様々な技術者を顕彰することも、今後の励みになり、また後進の指導にも熱が入るというもので素晴らしい。
実は私は製作側に立つことが多かった。特にCM製作には永く係わっていた。CMは特別な理由がない限り、放映の際にクレジットされることはない。ただしCM部門にも賞はあり、関連媒体ではCMの製作者、出演者などが紹介される。そこに名が載ることは今後の営業にもかかわり、製作するものとしては嬉しく、励みになることは今回の顕彰と同じだ。だが、職種によってはクレジットさえされない人もいる。受賞作品にクレジットされた時の嬉しさを思い起こし、多くの人の手によって作品が完成することを再認識した。この日、顕彰された皆様もどんな嬉しかったことだろうと思った次第だ。
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