上野まり子のアジアンスター

韓国映画『未熟な犯罪者』が「第25回東京国際映画祭」で2冠に輝く。受賞者会見レポ

未熟な犯罪者
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こんにちは 上野まり子です。
「第25回東京国際映画祭」において審査員特別賞を受賞した『未熟な犯罪者』(韓国)。監督のカン・イグァン氏は家族と社会をテーマにした作品を手がけて来ており、2005年の『サグァ』は第30回トロント国際映画祭で「国際批評家連盟賞」を、第53回サンセバスチャン国際映画祭では新人脚本賞を受賞している。
財政危機に見舞われた1997年の韓国、家庭経済は崩壊し離婚が増えた。その為両親がいない子供たちは路頭をさまようという状況だった。少年犯罪の厳罰化が叫ばれる中、少年たちをリサーチしたカン・イグァン監督は、この時期の少年たちに見られる反抗心や放縦さより、純情さやはにかみを多く感じたという。彼らが切望したのは人にかまわれる事。メディアに簡単に断罪される少年たちの実情を描いた。制作にあたってスタッフや俳優が実在の少年院に泊まりこみ、共に暮らすことで彼らの心理や状況を、身をもって体験し、理解を深めた。撮影も全て実在の施設で行われ、独自のリアリティーをもたらした。
少年犯罪者ジグを演じたのはソ・ヨンジュ。映画3作目となる本作では、幼さと大人らしさを併せ持つ存在感を発揮し、「第25回東京国際映画祭」最優秀男優賞に輝いた。また幼いシグを捨てた生活力はないが、なんとも愛らしい母親役にはイ・ジョンヒョン、日本でも歌手として活動していた時期もあるのでご存知の方もいるだろう。

『未熟な犯罪者』受賞者  ソ・ヨンジュ

カン・イグァン監督 さて「第25回東京国際映画祭」クロージングセレモニー終了後、会見会場に移動した『未熟な犯罪者』のカン・イグァン監督、主演ソ・ヨンジュ、イ・ジョンヒョンは早速記者の質問に答えた。カン監督は、本作は実話ではないが、3、4ヶ月ほど少年院に通い、実際に彼らと話たり、出所した少年や家出した子供たち、様々な境遇の子供達の話を聞くなど充分な取材を基に脚本を書いた。少年達の話はとても役に立ったと話している。
イ・ジョンヒョン 母親役のイ・ジョンヒョンさんは成長した息子ジグに始めて会うシーンの演じ方について問われ、最初は普通の母親同様感動で慟哭する演技を試みた。 しかし実際はどうであろうかと監督と再検討した結果、戸惑いが先にたち、動揺を隠す為にむしろ通常を装うのではないだろうかと、そのような演出になったと話した。 ソ・ヨンジュ
主演したソ・ヨンジュ氏は最優秀男優賞受賞者会見で、平凡な自分が平凡なジグを演じ、キャラクターになりきる事が困難だった。この映画への出演で、犯罪少年たちはただ怖いだけではなく、自分から近づき導くことで普通と変わらない平凡な少年とあることが解ったと語っている。


TIFF

<受賞作品・受賞者>
■コンペティション
東京 サクラ グランプリ :『もうひとりの息子』 (監督: ロレーヌ・レヴィ)
審査員特別賞 :『未熟な犯罪者』 (監督: カン・イグァン)
最優秀監督賞 :ロレーヌ・レヴィ (『もうひとりの息子』)
最優秀女優賞 :ネスリハン・アタギュル (『天と地の間のどこか』)
最優秀男優賞 :ソ・ヨンジュ (『未熟な犯罪者』)
最優秀芸術貢献賞 :パンカジ・クマール/『テセウスの船』 撮影監督 (監督:アーナンド・ガーンディー)
観客賞: 『フラッシュバックメモリーズ 3D』 (監督: 松江哲明)
■TOYOTA Earth Grand Prix
TOYOTA Earth Grand Prix :『聖者からの食事』 (監督: ヴァレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチュス)
審査員特別賞 :『ゴミ地球の代償』 (監督: キャンディダ・ブラディ)
■アジアの風
最優秀アジア映画賞 :『沈黙の夜』 (監督: レイス・チェリッキ)
アジア映画賞スペシャル・メンション :『ブワカウ』 (監督: ジュン・ロブレス・ラナ)
          『兵士、その後』 (監督: アソカ・ハンダガマ)
          『老人ホームを飛びだして』 (監督: チャン・ヤン)
■日本映画・ある視点
作品賞 『GFP BUNNY─タリウム少女のプログラム─』(*タイトルが『GFP BUNNY─タリウム少女の毒殺日記─』に変更) (監督: 土屋豊)
■TIFF特別感謝賞:レイモンド・チョウ

東京国際映画祭公式HP



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