小さな円で描く「土井宏之展 ペン&アート2015」開催中



土井宏之

 こんにちは 上野まり子です。
今日は東京・京橋のパイロット ペン・ステーションミュージアム&カフェで開催中の「土井宏之展 ペン&アート2015」をご紹介する。

 元々ヒッピーだとご自身を表現する土井宏之氏は独学で絵画を学んだ。その前職は料理人、10代で料理の道に入り、19、20歳にはすでに数人を従えての長になっていたという。そんな料理の世界で絵心を発揮したのは氷彫。海外からのVIPも出席する大きなパーティーで、それまでの慣例を破ったデザインの氷彫は絶賛を浴びたそうだ。

土井宏之  土井宏之
© OFFICE MARIKO

 さて今回ご紹介する土井宏之氏の作品は黒のドローイングペンのみで描かれる無数の小さな円が連なる世界。それは時に寄り集まる気泡の様でもあり、時に宇宙の星のようで無限の世界をも感じさせる。

 手すきの和紙に、いつ終わるともない悠久の時を費やし描かれる〇で表現するテーマは、魂、輪廻転生、宇宙、対話、共存共生。全てがデジタルへと変化していく中、次世代の子供たちに、自らの手で描き、作る事の大切さを伝えていきたいと話す。

 そんな土井氏の作品が日本で紹介されたのは2013年。大正7年創業のパイロットが京橋に開設している国内唯一の筆記具ミュージアム「パイロット・ペンステーションミュージアム&カフェ」、今年で3回目となる。

 実は土井氏は2001年にはすでにニューヨークで紹介され、以来作品は毎年アートフェアで展示されているほか、ニューヨークにあるアメ リカンフォークアート美術館やパリ市立美術館、ロンドンのトーマ スウィリアムズファインアート等など、欧米諸国の美術館やギャラリー、アートサロンで展示され、美術評論家たちがニューヨーク・タイムス他に論評を掲載、高い評価を受けている。 さらに著名なコレクター達がこぞって彼の作品を所有していると聞く。

 今回の展覧会では2階のミュージアムに平和を祈って制作した畳 一畳大の作品 『未来』などの大作、1階のカフェにも新作が展示されている。土井氏も平日の午後には会場で作品の制作にあたっている。

 世界の人々との出会い、ご縁によって現在がある。人と人が繋がっていく事が大切だと話す土井氏、とりわけ未来を担う若い人々、子供たちへの想いは強く、深い。

 ”Mr,Doi”と世界のどこでも声がかかるそうだが、お話を伺っていてもインターナショナル観満載、固定観念や悪しき慣習などは本来 の”生きる”を阻害するというお考えのようで、その点も共感するところだ。何しろアートの専門家を前に、「アートより食べる事が先」と公言する程だ。これには一瞬沈黙があったものの、”確かに!”と同席した誰もが声を一にしたそうだ。

“人に、ものに、媚びない”そのような土井氏の生き方や考えが高い評価と信頼に結びついているのだろう。

「土井宏之展 ペン&アート2015」会期は残すところわずかだが、東京メトロ銀座線・京橋駅6番出口の真ん前がパイロット・ペ ンステーションミュージアム&カフェ。近くにお越しの際には立ち寄ってみるのはいかがだろう。2階では作品と同時に土井氏の制作の模様が、1階では美味しいコーヒーを飲みながら、壁にかかった作品がご覧になれる。ゆっくりと晩秋の午後の一時をお過ごしになるのもお薦めだ。

<2015年11月24日>
記事下方に【今日の一言】土井氏が語るちょっと素敵な「ペン物語」を追記しました。


スポンサードリンク


土井宏之 土井宏之展 ペン&アート2015
会期:2015年10月5日(月)〜11月28日(土)
会場
パイロット・ペンステーションミュージアム&カフェ
開館時間
ミュージアム
月〜金9:30-17:00、土11:00-17:00
カフェ
月〜金8:00-19:00、土11:00-17:00
休館日:日曜日・祝日
展示点数:16点
入館料:無料
主催:パイロットコーポレーション/ Yoshiko Otsuka Fine Art International, Tokyo


■作品及び作家へのお問い合わせは
Yoshiko Otsuka Fine Art International Tokyo
大塚芳子 yoshikootsukajapan@gmail.com
株式会社パイロットコーポレーション「土井宏之展 ペン&アート2015」
土井氏が制作に使用しているパイロット油性ドローイングペン

【今日の一言】
土井氏が語るちょっと素敵な「ペン物語」<2015年11月24日追記>

 土井宏之氏が作品制作に使用しているのは「パイロットドローイングペン005」。このペン一筋と言う氏は「ペンも人間と同じように一生があるんだよ」と語る。

「このパイロットドローイングペン005は本当に優れものです。このペンに出会ったので僕は作品を作ることができるんです。一本のペンには、”ペンの一生”といえるものがあります。使い始めの若い青年期のペンは太い線を、油の乗った壮年期のペンは自由自在に、そして長く書き続けた老年期のペンは細く綺麗な素晴らしい線が描けるのです。」

 20年近い歳月を使用し続けた土井氏ならではの「ペンの一生」のお話しを伺い、途中まで使っまま放置してある数々のペンを眺めて申し訳ない気持ちになった。

 そうそう、思い出したことがある。最近小学校で通常使用される鉛筆は2Bだそうだが、その原因の一つは握力不足。何しろ物を書くという習慣が圧倒的に少なくなってきた。ちょっとしたメモもデジタルで済ませる時代だ。漢字も読むことは出来ても、いざ書こうとするとふと手が止まる。この兆候はますます強くなるだろう。

 日本語の文字は記号ではない。ひらがなもちゃんと訳があってその形になっている。文字は芸術、アートでもある。その意味ではだれもがアーティストともいえる。

 さて、ペンの話から少し寄り道をしてしまったが、土井氏がいうように”何かを書く”を自らの手でやり続けることを忘れてはならない。

ぺン立てを見つめて思ったことを書いてみた。残念ながらこちらはデジタル文字という事にはなるが...。

前頁 
トップページ > 上野まり子の視点記事一覧
本サイトで掲載されている記事、写真の無断使用・無断複製を禁止いたします。


スポンサーリンク