上野まり子のアジアンスター

映画『トガ二 幼き瞳の告発』ファン監督来日「表現の力が民衆を動かした」シンポジウムレポ

「トガ二」シンポジウム

こんにちは 上野まり子です。
コン・ユ主演映画『トガ二 幼き瞳の告発』は、社会、国家をも動かした話題作だ。8月4日(土)の公開を前にファン・ドンヒョク監督が来日、7月24日(火)東京のスペースFS汐留にて試写会と「表現の力が民衆を動かした」と題したシンポジウムが開かれた。進行は放送作家で自らもTV出演をしている鈴木おさむ氏、ファン・ドンヒョク監督および日韓両国で活躍している弁護士のパク・インドン氏が登壇した。

鈴木おさむ

鈴木氏は試写を観て、衝撃を受けたと同時に怒りの涙がこみ上げてきたという。こんな体験は初めてという鈴木氏は映画のパワーを感じ、一人でも多くの人にこの映画を観てほしいと強く思ったそうだ。 監督には聞きたいことが沢山あるという彼、早速ファン監督に迫った。
鈴木氏:韓国映画は事実を基にした作品が多いが、残酷さのみが強調され、少々がっかりする作品もある。そんな中監督がこの映画を撮った目的は?

ファン・ドンヒョク監督

ファン監督:映画化の提案を受けてから原作の小説を読み、初めて事実を知った。読みながらも衝撃を受け、涙が出て読み進むのも困難だった。映画化については自信がなく、一度は別の監督にと断った。しかし一ヵ月後に進展を訊いたところ、まだ監督が決まっていないという事だった。この事件の関係者がすでに過去の人となっている古い事件であれば受けなかったが、わずか5年前の事件でありながら民衆は知らなかった。それまで被害者や支援グループが真相の究明について様々な働きかけをして努力を重ねて来たものの進展がなかった。この事件を映画化することによって広く世の中に知らせる事になると思った。

ここで疑問に思うのは、容疑者は罰せられたのか?ということ。
パク弁護士:当時は軽い刑罰だった為に、この事件は世間に広がらなかったのであろう。韓国の法律の不備と暴力に対する韓国人の社会的認識の低さによるものだろう。
鈴木氏:ドキュメンタリーの手法をとる事も出来ただろうが、エンターテインメント性を高めて感情に訴えかける作品になっているが、意識したのか?
ファン監督:事実と小説、映画は別物だ。小説の最後は、カン・イノが妻に説得され、デモには参加せずにソウルに逃げてしまう。しかし映画では観衆はカン・イノの目線で観るだろうと予想し小説とは違う結末にした。

鈴木おさむ

鈴木氏は犯行の見せ方が効果的で<むかつくやつ>としてしっかり捉えられていたと感情をむき出しにすると、ファン監督は校長と行政室長役(一人二役)の俳優チャン・ガン氏はしばらく外出が出来なかったとエピソードを紹介した。

さてこの映画は韓国の法律をも変えたと話題であったが、具体的に法律の専門家であるパク氏から「トガ二法」と呼ばれる法の改正について説明があった。ここでは簡単にご紹介しておく。
「トガ二法」の正式名称は「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法の2011年10月28日改正法律」で、障害者に対する性暴力の刑罰が重く改正されたものだ。特に障害者用の施設や学校において、職員が性暴力に及んだ場合は通常の刑罰の1/2以上が加重される。13歳未満の女児への性暴行の時効撤廃などの法改正が行われた。この法改定によって被告キムに対し、12年の懲役他が科せられた。

『トガ二』シンポジウム

鈴木氏は“それでも軽いよね!”と怒りが収まらない様子。
では映画製作に当たって、監督は被害者や加害者などと話をしたのか?というのが鈴木氏の次の疑問だ。
ファン監督:原作者コン・ジヨンさんが小説にするにあたって当事者と会い、また支援活動にも加わったと聞いていたので、自分はあえて会わなかった。知りすぎる事によって、かえって演出の妨げになると思った。
鈴木氏:映画公開後に関係者からの連絡は?
ファン監督:被害当事者達は事件発覚後、学校の閉鎖、事件の再調査、法改正を求めて5,6年活動して来たが、封鎖的な環境の為何一つ動かなかった。しかし映画が公開されたことで、2、3ヶ月で劇的に変化した。嬉しい反面、韓国社会が正常ではないと言う実態が明らかになり、ほろ苦く、やるせない思いもある。
鈴木氏は何故、それまで変わらなかったのか?と韓国社会の現状に更に鋭く突っ込む。
パク氏:一部の悪質な施設に対して抗議があったとしても、直ちに法改正には至らない韓国社会の認識の低さだろう。
では何故この映画の公開が法の改正にまで至ったのかと鈴木氏。
ファン監督:試写の段階で、多くの人がSNSで話題とし、世論となり国民の声となっていった。マスコミが大きく取り上げ、無視できない状況になったのだろう。大統領もコメントを出しているが、特別な働きかけをしたわけではない。

鈴木氏:コン・ユ自身が映画化に熱意を示したそうだが本当か?

ファン・ドンヒョク監督

ファン監督:本当だ。入隊中に上官からプレゼントされたのが原作本だった。軍隊の組織論理を、身をもって感じていた彼が、休暇の際に所属事務所の社長にこの作品を映画化したいと申し出た。映画化によって世間にしっかりと広げたかったのだろう。
“日本にはそんな俳優いないよ!”と鈴木氏、人気俳優が映画化の提案をして、法改正までに至るパワーが凄いとしきりに感銘を受けていた。
そんなコン・ユについてファン監督は、俳優は気難しい人が多い中、彼は全く違っていてびっくりした。ハートも良い、性格も良いと大絶賛。コン・ユはシリアスな作品が初めてだったのでファンはびっくりしただろうと話した。

鈴木氏:今後の製作予定は?
ファン監督:デビュー作も、本作も実話に基づいた重いものだったので、次回作は違うジャンルにしたい。
鈴木氏は日本ではこのような事件がない事を願うが、こうした事件があったということを広めていきたい。是非、皆さんにこの映画をご覧いただきたいとした。
最後にファン監督はこのような事件は韓国だけではなく、世界でも起きている。日本においても強者が弱者をいじめる形で起きている。皆様はカン・イノの目を持って観てほしい。また実際にこうした事が起きていたら、皆さん自身が手を差し伸べてほしい。映画がそのきっかけとなってもらえればとメッセージした。


トガニ
© 2011 CJ E&M Corporation. All Rights Reserved
8月4日(土)公開
シネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

公式HP

【概要】
映画『トガニ 幼き瞳の告発』(原題:トガニ)
2011年 韓国 125分
原作:孔 枝泳(「トガニ 幼き瞳の告発」蓮池 薫/訳 新潮社刊)
監督:ファン・ドンヒョク
出演:コン・ユ 「コーヒープリンス1号店」『あなたの初恋探します』、チョン・ユミ他
© 2011 CJ E&M Corporation. All Rights Reserved.
配給:CJ Entertainment Japan

【関連書籍】
トガニ: 幼き瞳の告発

【当サイト内『トガ二 幼き瞳の告発』関連ページ】
http://uenomariko.jp/asia/120720

*後日【今日の一言】コーナーで『トガ二 幼き瞳の告白』を取り上げる予定。



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