上野まり子のアジアンスター

チャン・ドンゴン主演『泣く男』 10月18日(土)公開



『アジョシ』のイ・ジョンボム監督が贈る、新たなる男のカタルシス
泣く男

泣く男
© 2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
10月18日(土)
新宿バルト9、丸の内東映他全国ロードショー
HP

 こんにちは 上野まり子です。
ウォンビンを主演に観客動員数630万人の大ヒットを記録し、シンドロームまで巻き起こした『アジョシ』('10)。韓国映画の新境地を切り開いたイ・ジョンボム監督4年ぶりの最新作『泣く男』が10月18日(土)公開される。

『アジョシ』では感情の揺らぎを見せないストイックな元特殊工作員を主人公にした監督は、今度は心に葛藤を秘め、“哀しき宿命”を背負った男を主人公に据えた。殺し屋が殺すべきターゲットに謝罪するイメージからスタートした本作は構想におおよそ10年間を要した。アクション映画でありながら、人間の運命としか言いようのない出会いと疎通、その内面や心情に深く切り込んだ。


泣く男 チャン・ドンゴン
© 2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

主演は、監督が殺し屋という仕事に対する懐疑感、崖っぷちに立つ男を上手く演じるに違いないと確信を持ち、最初から想定していたというアジアのスーパースター チャン・ドンゴン。2年ぶりの映画復帰作となった。

俊敏さや瞬発力、銃器やナイフを扱う手慣れた仕種などプロの殺し屋を演じるためアメリカの特殊部隊でのトレーニングを含む約5ヵ月の役作りを実施したチャン・ドンゴンは、序盤の殺気みなぎる鋭い眼光から孤独と悲哀がにじんでいく変容を繊細な表現力で見せた。


泣く男 キム・ミニ
© 2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

ゴンが思い出したくなかった母親の存在を思い浮かばせるモギョン役にはここ数年で演技が評価されているキム・ミニ。良い演技には役者の内面的な成熟さが大切だという監督が映画『火事』での彼女の演技を評価、モギョンにぴったりだとキャスティングされた。

このプロジェクトにはイ・モゲ撮影監督、イ・チョロ照明監督、ホ・ミョンヘン武術監督という韓国最高の製作陣が揃った。またロケで一番大切なことは人物の感情を見せる場所を探すことだとする監督は、幼いゴンが砂漠に捨てられるシーンとジレンマに陥り辛く哀しい殺し屋の姿を盛り込むため、アメリカの砂漠の無法地帯とLAダウンタウンを選び、現地プロダクションやLA映像委員会、LA警察の協力のもと大がかりなロケを敢行した。

監督はチャン・ドンゴンに生後6か月でアメリカに養子に出されたジェーン・ジョン・トレンカのエッセイ「血の言語」をプレゼントした。それは、他国に一人きりで残され混乱し、苦しい成長期を送った主人公ゴンの心境を間接的にでも接してほしいという想いからだった。チャン・ドンゴン自身、全く違う環境で育った自分がキャラクターと同化できるか心配した。この本がとても役だったと話している。また撮影当初にゴンというキャラクターととても密接になった感じだったとも話している。

キム・ミニに渡されたのはオランダ民謡で戦地で命を落とした息子を偲ぶ父親の心境を歌った『Danny Boy』。イ・ジョンボム監督はこの曲の持つ哀しさに魅せられて映画の挿入歌に採用した。また劇中でキム・ミニ自身がその哀切な感情を歌い上げている。俳優だけでなくスタッフにもイ・ジョンボム監督の特別なメッセージで任務が与えられた。


泣く男 チャン・ドンゴン
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物語は、冷徹な殺し屋が犯した想定外のミスから始まる。やるせない罪悪感に囚われ、生きる気力さえも失っていくゴンに雇い主の犯罪組織が与えた非常なミッション。やがて封印していた忌まわしい記憶が甦ったゴンは、殺し屋として捨てたはずの“情”を呼び覚まされ、痛切な決意で組織との死闘に身を投じる事になる。

狭いアパートでゴン、韓国人ギャング、組織が放った最強の殺し屋3人が入り乱れる白昼の銃撃戦は、スタッフ間で”ローズ戦闘”と呼ばれ、本作のアクションコンセプトとスケールが際立つシーンとして観る者に瞬きさえ許さない緊迫感を強いる。またハイテク・タワービルでの息づまる駆け引きとクライマックスのバトル・シークエンスなどその驚くべきアクション・シーンの数々にも圧倒される。

『アジョシ』と異なるストーリーや登場人物を描きながらも、両作の孤高の男たちの魂の叫びが生み出すカタルシスは合せ鏡のように共鳴する。アクション映画でありながら、人の格を描き込む。これがイ・ジョンボム監督が一番重要視した点だ。 贖罪のために絶望的な闘いに身を投じる“泣く男”に秘められた慟哭の真実とは――
『泣く男』10月18日(土)公開

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公開を記念して現在「上野まり子のアジアン・スターインタビュー」にて
イ・ジョンボム監督、主演のチャン・ドンゴン、キム・ミニのインタビューを掲載中

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【作品概要】
『泣く男』
2014年/韓国/116分/R15+
監督:イ・ジョンボム 『熱血男子』、『アジョシ』
出演
チャン・ドンゴン 『マイウェイ 12,000キロの真実』、『ブラザーフッド』
キム・ミニ 『恋愛の温度』、『火車』
キム・ジュンソン
キム・ヒウォン
カン・ジウ
提供&配給:CJ Entertainment Japan
<ストーリー>
 幼い頃にアメリカの砂漠に捨てられ、殺し屋に育てられたゴン(チャン・ドンゴン)は中国系犯罪組織に身を置くプロの殺し屋。ある晩、任務遂行中に誤って幼い少女ユミ(カン・ジウ)を撃ち殺すという取り返しのつかないミスを犯してしまう。何とか忘れようと酒に溺れ、やるせない虚脱感に陥るゴン。しかしその罪から逃れようともがけばもがくほど、葬り去ったはずの過去の哀しい記憶が蘇ってくるのだった。そんな彼に組織から新たな暗殺命令が出る。これが最後の任務と決め、一度は捨てた故郷の地、ソウルに降りたつゴン。そこで彼を待ち受けていたのは、哀しい因縁で結ばれた最後のターゲットと、硝煙と薬莢の嵐のような壮絶な死闘だったー。



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