上野まり子のアジアンスター

映画『KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜』2015年1月24日(土)公開

KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜
KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜
© 果子電影
2015年1月24日(土)新宿バルト9他全国公開公開
HP

こんにちは 上野まり子です。
今回は【今日の一言】からお届けしたい。
高校野球の試合と言えば甲子園。特に毎年夏の甲子園を楽しみにしている熱狂的なファンも多い。実は私はあまり興味がなかった。と言うより、高校生の若さでその後の人生が決まるという事に残酷さを感じていたからだ。もちろん長い歴史の中で様々なドラマが展開されてきた甲子園、プロ野球選手になってスター街道を歩む人もいるが、その数はわずかだ。どのジャンルでもプロとなれば限られた人であることはわかる。しかし、小さいころからプロを目指し懸命に努力し、その成果としての甲子園大会出場が夢への第1歩となる。だが多くの球児は負けて涙する。その姿が痛々しい。
だが、今回ある試合を見て感動した。それは年が改まっての1月24日(土)公開となる映画『KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜』。

時代は1931年、日本統治下にあった台湾から甲子園に出場し、決勝まで勝ち進んだ日本人と台湾人(漢人※1)、台湾原住民(※2)による「嘉義農林高校」野球部<KANO>。その感動の実話を基にした映画「KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜」。
本国で今年2014年2月27日に公開され、1億台湾ドルで大ヒットと言われる中、3億台湾ドルを突破するメガヒット。3か月に及ぶロングランとなり、さらに9月には異例のアンコール上映も行われた。

部結成間もない弱小の嘉義農林高校野球部を率いたのは、自身の母校でもある名門松山商業初代監督(「松山商業高校野球史」)で、1925年に春の甲子園大会優勝という松山商業高校第1期黄金期を支えた近藤兵太郎。友人の誘いで1921年から台湾に渡り1925年から嘉義商業高校にて簿記講師として教鞭を取りつつ、帰郷し松山高校の野球部の指導に当たっていた。その彼が1928年4月に野球部を結成した嘉義農業高校からの依頼を受け、1929年から放課後指導を開始、各人の出身地からその身体的能力と実力を生かし、人種の差別なくスパルタ特訓を行った。1931年には正式に嘉義農業高校野球部監督となり、その年に台湾全島大会にて優勝、甲子園への切符を手にする。近藤の指導開始からわずか2年で台湾最強の高校野球チームになったのだ。

ウェイ・ダーション      マー・ジーシアン

この史実をテレビ局の資料室で見つけ、映画化したのは『海角七号 君想想う、国境の南』(09)、『セデック・バレ』(13)の監督ウェイ・ダーション(左)。本作が日本と台湾を描いた三作目となり、今回はプロデューサーを務め、脚本も担当。劇中で投手呉とともにポイントとなった蘇正生(ソ・ショウセイ)に実際に話を聞けたことは貴重だったという。蘇は亡くなる2年前の2006年当時、90歳半ばだったが長身でがっちりしており、素晴らしい記憶力だったと振り返る。2006年に書き始めた脚本は2010年に完成した。
メガホンを取ったのはウェイ監督作品『セデック・バレ』に出演した俳優でもあるマー・ジーシアン(右)。本作品が監督としての長編デビューとなる。もう一人のプロデューサーは台湾映画界を牽引するジミー・ホワン。

永瀬正敏 近藤兵太郎を演じたのはデビュー30周年を迎えた永瀬正敏。ウェイプロデューサーは最初から永瀬を想定していたと言うが、当初ブッキングには苦労をしたようだ。永瀬の演技に向き合う真摯な姿に「彼は小さな動きの背景にあるものまで明確に表現する命を作り出す俳優だ」と絶大な信頼と高い評価を与えている。もちろんマー監督もこれまで知り合った中で一番プロフェッショナルな俳優であり、同時にすごい創作者だとこちらも手放しの褒めようだ。観客に感動を与える映画を作りたいと話すマー監督。優勝を目指して全身全霊で戦った野球少年たちの“絶対に諦めない精神”を感じてほしい。そして困難にぶつかった時にこの精神で乗り越えてほしいと日本の観客へメッセージしている。

ツァオ・ヨウニン 嘉義農高野球部投手で4番バッター兼キャプテン呉明捷(ゴ・メイショウ)・通称アキラを演じたのは現役の大学野球部外野手ツァオ・ヨウニン。大学を一年休学しなければならない点に父親は反対したというが、「2014台北電影奨」で「助演男優賞」を受賞。今やアイドル的存在となった。ナインにキャスティングされたのもすべて5年以上の野球経験を持つ人たち。マー監督は演技は教えられるが、野球は教えられないからとした。

大沢たかお また台湾で大きな功績を残し“嘉南大3W の父”“烏山頭ダムの父”と呼ばれる八田與一に、ドラマ「JIN ―仁―」で台湾でも知られる大沢たかお。
坂井真紀 近藤の妻役には坂井真紀がキャスティングされた。 また甲子園野球解説者には元プロ野球選手で監督の水上善雄。甲子園の実況中継のアナウンサー役には実際に文化放送の人気アナウンサー斉藤一美が起用された。

1931年に甲子園決勝戦まで勝ち進んだ嘉義農高は、残念ながら名門中京高校に敗れる。しかし当時、試合を見た文豪菊池寛をすっかり魅了し、「異なる人種が同じ目的のために努力する姿は何となく涙ぐましい感じを起される」と言わしめた。その情景は作品の中の試合クライマックスのグラウンドと観戦席の感動的なシーンとしても再現された。

嘉義農高野球部の「異なる人種」は本作の主題歌「♪風になって〜勇者的浪漫〜」にも生かされ、Rakeに楽曲を依頼、中孝介、ファン・イーチェン、スミン(台湾原住民シンガー・ソングライター)、ルオ・メイリンという日台のスペシャル・コラボが実現した。

「知っていましたか?かつて、甲子園に台湾代表が出場していたことをー。」と始まる本作のコピー。知らなかった感動の試合がスクリーンを通して蘇る。日本人が忘れかけている大切な何かを思い出させてくれる「KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜」、その感動をぜひ劇場で!

本作は11月21日に行われた台湾の映画賞「金馬奨」において「観客賞」と「国際映画評論家連盟賞」を受賞した。なお、「金馬奨」の歴史の中で、一つの作品がこの二つの賞を受賞するのは初めての快挙となる。

KANO〜1931 海の向こうの甲子園〜
© 果子電影
2015年1月24日(土)新宿バルト9他全国公開公開
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【概要】
2014/台湾/185分
製作総指揮:ウェイ・ダーション
監督:マー・ジーシアン
脚本:ウェイ・ダーション チェン・チャウェイ
プロデューサー:ウェイ・ダーション ジミー・ファン
出演:永瀬正敏 坂井真紀 ツァオ・ヨウニン / 大沢たかお
制作会社:果子電影有限公司(ARS Film Production)
配給:ショウゲート
宣伝:ヨアケ
© 果子電影
主題歌:「風になって〜勇者的浪漫〜」
Rake、中孝介、ファン・イーチェン、スミン、ルオ・メイリン
(EPICレコードジャパン)

<ストーリー>
日本統治時代の台湾。日本人、台湾人(漢人)※1、台湾原住民※2 の 3 民 族からなる、弱小チームの嘉義農林学校(KANO)野球部に、名門・松山商業を率いた近藤 兵太郎が監督として就任した。近藤のスパルタ式指導のもと、甲子園大会を目指し、猛特訓が 始まる。とまどう3民族混成チームの部員は、監督の情熱に、しだいに心をかよわせていく。1931 年、ついに台湾代表となり、夏の甲子園に出場。一球たりとも諦めないあきらめない野球で快進 撃が始まった…。
※注1:中国大陸から移住した漢民族の子孫
※注2:台湾の先住民族の正式な呼称

「上野まり子のアジアン・スターインタビュー」



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