上野まり子のアジアンスター

ターシャ・テューダー
静かな水の物語

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© Richard W Brown
4月15日(土)
角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
公式サイト

 こんにちは 上野まり子です。 今日は久しぶりにドキュメンタリー映画のご紹介をさせて頂こうと思う。 ターシャ・チューダー、アメリカを代表する絵本作家作家の一人で、2008年92歳で亡くなるまで植物や動物を愛し、自然に寄り添いながら暮らした素敵な女性。その生き方は世界中の人々を魅了した。

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会

 1915年、ボストンでライト兄弟と肩を並べる設計家だった父と肖像画家の母の間に生まれたターシャ・チューダー。1938年、23歳の時に夫の姪を主人公にした手作りの小型の絵本『パンプキン・ムーンシャイン』がきっかけとなり絵本作家となった。
 1945年には『ターシャ・テューダーのマ ザー・グース』でアメリカの優れた絵本作家に与えられるコルデコット賞オナーブックに選ばれている。またコーギ犬を主人公にした『コーギビルの村まつり』がベストセラーを記録、1971年に児童書の普及に貢献した人物に贈られるレジャイナ・メダルを受賞した。

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会

 終の住処となったバーモント州にある18世紀風の古い大きな農家づくりの家はコーギコテージと呼ばれ、手がけた美しい庭は「アメリカのコテージガーデンのお手本」と讃えられ、彼女の生き方とともに人々を魅了した。

 日本でも1996年に彼女の暮らしを紹介した『ターシャ・テューダー手作りの世界暖炉の火のそばで』(KADOKAWA/メディアファクトリー)が出版され話題を集め、庭を紹介する本や心にしみる言葉を集めた書籍等、その総数は350万部を超える大ヒットとなった。
 2005年からは4本のドキュメンタリーがNHKで放送され、人気番組として再放送が繰り返された。また 生誕100周年にあたる2015年からは日本各地で展覧会が開催され、13万人の来場を記録して関心の高さを示した。

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会

 そしてメモリアルイヤーズクライマックスとなる今年4月15日には10年間に渡って撮影されたライブラリー映像に加え、これまで撮影が許されなかったプライベート映像やご子息、お孫さんやひ孫たち現在のテューダー家の人々を捉えている映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』が公開される。
 タイトルにつけられた"静かな水"とは、「静かな水のように穏やかであること。周りに流されず自分の早さで進むこと」、「私はスティルウォーター教よ」というターシャさんの言葉からとられた。

 監督は動物ドキュメンタリーや自然ドキュメンタリー、人物ドキュメンタリーや美術番組など数々のTV番組を手がけてきた松谷光絵、NHKのターシャ・ テューダーシリーズの全作を手がけている。
 企画・プロデュースは鈴木ゆかり。ターシャ・テューダーシリーズ他、同じくNHKの「猫のしっぽカエルの手 ベニシアさんの京都・大原手作りの暮らし」など、一貫してライフスタイルドキュメントを手がけて来た。撮影はドキュメンタリーを中心に活躍す る高野稔弘、松谷監督や鈴木ゆかりPDと共に多くの作品の撮影を手がけて来た。

 海外のガーデニング番組を手がけていた鈴木PDは"ターシャさんが憧れ"という声が多かった事から取材の依頼をしたという。快諾してくれたターシャさんがコマーシャリズムを嫌う方だったことから企画はNHKに持ち込まれた。
 時代を超えた普遍的なメッセージを未来に残したいとの思いから立ち上げられたこの企画、サブタイトルの"静かな水"は大きな波に流されることなく、静かに前進するターシャさんの生き方を表し、水に映る自分自身を見つめる在り様を象徴する言葉だと監督はインタビューに答えている。

 テレビ嫌いで知られるターシャさん、「何故取材を受けてくださったのか」という鈴木PDの問いかけに、「庭は絶えず変化する生き物だから、映像に残しておくのも良いかなと思って」と答えたという。
 いつ誰が観てもターシャさんと一対一で向かい合う事ができるようにとあえてナレーションは入れられていない。

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会

 松谷監督はターシャさんの研ぎすまされた美的感覚にハッとすることがしばしばあったという。そんな撮影の合間にターシャさんが入れて下さるアイスティーはレモン、ライム、オレンジなどの果汁にジンジェエールが隠し味となった絶品。「カメラを置いて一緒に飲みなさい」とたしなめられた事や、経験が無いはずのビデオ撮影の撮影角度等も指摘されたというエピソードをインタビューで紹介 している。
 陰の大監督はターシャさんと振り返る松谷監督。「誰でも思い通りの人生を送る事ができるのよ」という彼女からのエールだと話している。インタビューの最後にお一人お一人がターシャさんと向き合い、この先の人生を豊かにする鍵を見つけていただけたら嬉しい限りと結んでいる。
 現在はお孫さん夫婦が手を入れてオープンガーデンとなり、ターシャさんの生前の庭とはまた違う魅力を感じさせてくれるという。

ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会

 私が彼女の名を知ったのはそのNHKのドキュメンタリー番組の一つ。息子さん手作りのコーギコテージと呼ばれる18世紀風の古い大きな農家づくりの家に一人で住んでいた。四季それぞれに花々が咲き乱れる庭、その中を長いスカート姿でゆっくりと歩み、手入れに余念がないターシャ・チューダー。時にはか細い腕でスコップを握り土を掘り起こし、次のシーズンに備えて入念な手入れを怠らない。
 そんな大切な庭を眺めての午後のお茶の一時は何よりの楽しみのようだ。創作活動は勿論、日々を慈しみながら生きているその姿には憧れを覚える。そしてただ優しいだけではなく、時に見せる鋭い視線からは真摯であり、揺るぎない信念の持ち主である事が察せられる。また静かに語る言葉の数々は、本当にそうですねと頷き、心に沁みる。
 都会で仕事に没頭する日々を送り、年齢を重ねて来ると、土のある暮らしに夢を抱くのは私ばかりだろうか。一人の女性の素晴らしい生き方を感じてほしい作品、映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』是非劇場で!



ターシャ・テューダー 静かな水の物語
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会
4月15日(土)
角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
公式サイト:http://tasha-movie.jp

【作品概要】
ターシャ・テューダー 静かな水の物語
2017年/日本/デジタル/カラー/16:9
監督:松谷光絵
出演:ターシャ・テューダー
セス・テューダー/ウィンズロー・テューダー エ イミー・テューダー
配給:KADOKAWA
© 2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会
公式サイト
【STORY】
米国バーモント州。雪深い山奥に18世紀風の農家コーギコテージがあった。まるで絵本の世界に迷い込んだようなコテージには、コーギ犬と一 緒に暖炉に温まり、絵を描く 1 人の女性がいた。アメリカを代表する絵本作家、ターシャ・テューダー。70年もの間、現役で活躍、離婚を経験し女手ひとつで4人の子供を育てあげた後は一人暮らしを謳歌した。「思うとおりに生きてきた」と語るその人生は、決して平坦な道のりではなかった。そんな彼女の知られざるライフストーリーと、多くの人々を魅了する喜びにあふれた暮らしを映し出す。

【関連書籍等ご紹介】
ターシャ・テューダー手作りの世界暖炉の火のそばで
コーギビルの村まつり
ターシャの庭
NHK ターシャからの贈りもの 永久保存ボックス<DVD+愛蔵本>魔法の時間のつくり方
NHK 喜びは創りだすもの ターシャ・テューダー四季の庭 永久保存ボックス〈DVD+愛蔵本〉


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